平成28年度税制改正大綱【消費課税・その他】高額資産を取得した場合の簡易課税制度の見直し

2016年7月25日
1.概要

事業者(免税事業者を除く)が、簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に国内において高額資産(※1)の仕入等を行った場合における消費税の中小事業者に対する特例措置の見直しが行われました。 会計検査院の問題提起で明らかとなった特別目的会社を利用した消費税節税スキームを防止するための改正ですが、大綱では対象者が特別目的会社に限定されておらず、一般の事業会社も対象となります。

(1) 高額資産の仕入れ等を行った場合
「高額資産の仕入れ等の日の属する課税期間」から「当該課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間」までの各課税期間においては、事業者免税制度及び簡易課税制度は適用できないこととされました。
(2) 高額資産を自ら建設等した場合
「建設等に要した費用の額が税抜1,000万円以上となった日の属する課税期間」から「当該建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間」までの各課税期間においては、事業者免税制度及び簡易課税制度は適用できないこととされました。
(※1)「高額資産」とは、一取引単位につき、支払対価の額が税抜1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産 (※2)をいいます。
(※2)「調整対象固定資産」とは、棚卸資産以外の資産で、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で、一取引単位につき、支払対価の額が税抜100万円以上のものをいいます。
2.適用期間

平成28年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合について適用されます。
ただし、平成27年12月31日までに締結した契約に基づき、平成28年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合には適用されません。

3.適用対象者

簡易課税制度の適用を受けない課税期間に高額資産の仕入れ等を行った事業者(免税事業者を除く)。

4.想定される影響

高額資産の購入をした事業者についてはその後3年間は事業者免税点制度及び簡易課税制度が適用できないため、多額の設備投資などを行う場合には留意が必要です。また、設備投資だけでなく、棚卸資産も範囲に含まれているため、高額の棚卸資産を取得する場合にも留意する必要があります。

【具体例】
(1) 大規模法人がSPC(特別目的会社)を設立
(2) 建設業〔事業区分:第三種事業(みなし仕入率70%)〕
(3) 第1 期
・建物を30 億円(税抜)で建設し完成
・「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出し、第2 期から簡易課税制度を選択
(4) 第2 期
・当該建物を60 億円(税抜)で売却

【改正前】


第1期:建物の建設に要した課税仕入れについて、本則課税による仕入税額控除を利用し消費税2.4億円を還付
第2期:簡易課税制度を選択することで、建物売却代金のみなし仕入割合相当分3.4億円の仕入税額控除が可能

【改正後】


第1期:建物の建設に要した課税仕入れについて、本則課税による仕入税額控除を利用し消費税2.4億円の還付
第2期:簡易課税制度を適用することができず、仕入税額控除の適用を受けることができない

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