平成28年度税制改正大綱【法人課税】事業税の分割基準に係る従業者数の計算/その他

2016年4月28日
1.事業税の分割基準に係る従業者数の計算【見直し】

国外に恒久的施設(PE)を有する法人の事業税の所得の計算は、所得の総額から国外の事業に帰属する 所得を控除して計算を行います。この場合、国内と国外の事業に所得を区分するが困難であると認められ るときは、従業者数により所得の総額を按分して、国外の事業に帰属する所得の計算を行うことが認められています。


現在の法令では、外国の従業者数は期末の従業者数を用いることが定められており、期中に国外の事業を廃止した場合には、期末従業者数は0 人となり、国外所得金額が期中発生しなかったことになってしまう、不合理な状況となっていました。
今回の改正ではこのような状況の是正を行うため、上記『※算定には、期末現在の従業者数を用いる』とされている部分が、事業年度の中途において内国法人が国外の事業を開始又は廃止した場合等には、その事業年度の属する各月の末日現在における従業者を合計した数値により按分計算をすることになります。

2.その他

(1)生産性向上設備等の投資促進税制の廃止

投資促進税制は、当初の期限通り特別償却及び税額控除率の上乗せ措置を平成28 年度に縮減した上で、平成28 年度末(平成29 年3 月31 日)をもって廃止されます。

平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度 平成29年度
特別償却
(うち建物、構築物)
即時 即時 即時 50% 廃止
即時 即時 即時 25% 廃止
税額控除
(うち建物、構築物)
5% 5% 5% 4% 廃止
3% 3% 3% 2% 廃止

(2)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の見直し及び延長

中小企業者等が取得価額30 万円未満の減価償却資産(1事業年度合計300 万円を限度)を取得した場合の即時償却制度について、マイナンバーや消費税複数税率対応で事務負担が増加する中小企業に配慮して、適用対象者から常時使用する従業員数1,000 人超の法人を除外した上で、その適用期限が2年延長されます。

(3)環境関連投資促進税制の縮減及び廃止

エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、以下の対象資産を除外した上で、その適用期限が2年延長されます。

1.即時償却の対象資産から風力発電設備を除外
2.税額控除の対象資産から車両運搬具を除外
3.対象となる太陽光発電設備を電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の認定発電設備以外のものとする

(4)高齢者向け賃貸住宅の割増償却制度の縮減及び延長

サービス付き高齢者向け賃貸住宅の割増償却制度について、割増償却率を現行の14%から10%(耐用年数が35年以上であるものについては20%から14%に引き下げた上で、その適用期限が1年延長されます。

(5)地方法人特別税の廃止

平成29年4月1日以後に開始する事業年度から地方法人特別税が廃止となり、法人事業税に一本化されます。

【地方法人特別税率】
地方法人特別税の税率(※) 現行 改正案
H28年4月1日以後
開始事業年度
H29年4月1日以後
開始事業年度
外形標準課税適用法人 93.5% 152.6%→414.2% 廃止
外形標準課税適用法人以外 43.2% 43.2%(改正なし) 廃止

※地方法人特別税の税率=所得割額に対する税率
※地方法人特別税額=「基準法人所得割額×地方法人特別税の税率」により計算

(6)中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻し還付の不適用措置【延長】

大企業に対する欠損金の繰戻し還付の不適用措置の適用期限が2年間延長されます。

(7)交際費等の損金不算入制度【延長】

その適用期限を2年間延長するとともに、交際費等の額のうち接待飲食費の50%を損金の額に算入する特例及び中小法人に係る定額控除制度についても、適用期限が2年間延長されます。

(8)地方拠点強化税制(雇用促進税制)【拡充】

雇用促進税制の地方活力向上地域特定業務施設整備計画による拡充措置について、さらに所得拡大促進税制との重複適用が出来るようになります。
但し、重複して適用を受ける場合には、所得拡大促進税制の計算の基礎となる雇用者給与等支給増加額から、増加雇用者に対する給与等支給額として一定の金額を控除して計算することとなります。

(9)特定資産の買換えの場合等の課税の特例【拡充】

都市再開発法の改正を前提に、市街地再開発事業による買換えについて、個別利用区が設定される第一種市街地再開発事業の実施に伴い取得するものについても対象とされます。(所得税についても同様とされます。)

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